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2010年09月26日

隣の家の少女



ジャック•ケッチャムです。

名前だけは知っていたのですが、
初めて読みました。

まあ
アマゾンのレヴューでも盛大に書かれていますので、どんな作品か、を詳しく知りたい方はそちらを覗いてみてください。

これの映画化作品が最近DVDになってTSUTAYAのたなに並んでいたのをみて、
借りようかな、と思ったら全巻貸出中だったので、原作の方を読もうか、と。


そんな流れで読んだんですけど、

ページを開いた途端から
まさに一気読み、でした。

こう言う読書体験は久しぶりです。

そういう意味じゃ
アマゾンのレヴューに盛大に書かれている通りの“傑作”です。

しかし、
はっきり言うとこれは『呪い』です。

読後『呪い』をかけられる小説です。

呪い、というが、それは一体何だ、と思われるでしょうから、それを今から説明します。


私は
読後数日間、
この小説の、あるシーンで、
女の子が主人公の方を向き、目を合わせるくだりがあるのですが
(既読の方はおわかりでしょう?あのシーンですよ)
その映像が頭から離れなかったのです。


コンビニで買い物をしているときでも
その辺をぶらついている時でも
時を選ばず、その映像が甦る。

これは『呪い』ですよ。

今、これを書いているのは、
読後3日経ってようやく「呪い」がとけかかってきてくれているからで、
「呪い」の真っ最中のときは、何に対しても無気力で、
この世界の
ダークサイドで起こっている事に対して
何ひとつ出来ぬ自分にひたすら無力感を感じ、
こんな駄文を書くなんてとても出来なかったですね。

まあ、
そんな経験がしてみたい方は読んでみてください。
仕事でミスが増えることを覚悟して。


ただ、
いろいろ評価はあるでしょうが、
この作品は、全ての説明が作品の中でなされている、という点で確かに傑作です。

なぜ、このような事態が起こるのかを、
きちんと過不足なく説明しています。
それがなければおそらくここまで生き残る小説にはならなかったでしょう。

あなたがある程度の経験を積んだ大人なら
この小説の語り手と同じくらいの年齢なら
読むとすべてが判る。
おそろしいほどに判ってしまうのです。
底知れぬ悪行が一体どこから生まれてくるのか、が。

しかし判ってしまったら最後、
共犯者の一人として十字架を背負う羽目になる。

そういう恐ろしい小説です。









ラベル:隣の家の少女
posted by となーす at 17:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月21日

となーす書評「心では重すぎる」



平成10年連載、というのだからもう10年前の小説だ。

そのころから気にかかっていた小説で、
いつかよみたいと思っていた

読み始めて
3分の1くらいで、
なるほど
今のこのタイミングで読めたのが、ベストなんだな、と個人的なことで申し訳ないが、そう思った。

いや、
いい小説ですよ、本当に。

作家、大沢在昌自身にとっても
たぶん、だが特別な作品なのだろう、と思う。

力のかけ具合が
絶妙というか、

作家の送りたいメッセージが
実にいい気持ちの強度で伝わってくる。

この作家の作品は
代表作「新宿鮫」シリ一ズを始め
何作か読んでいるが、
この小説ほど、
大沢在昌の人となりが伝わる作品もないように思う。

一言で言うなら、
この小説は『職業論』だ。
そして、秀逸なのは、
職業と『心』の密接な関係を解き明かそうと試みている点だ。

これを探るのが
「私立探偵」だというところがよい。


アメリカ版のハードボイルドの亜流などでは決して、ない。
「私立探偵」の立ち位置のオリジナリティの高さにまずは、深く感心した。
和製ハードボイルドの定義もしくはその存在意義、の追求に多大なるエネルギーを投入した結果得られた、この著者なりの八ードボイルド論がここにある。
この一点だけでも
『心では重すぎる』は読むに価する。
特に会話が素晴らしい。
会話が素晴しい、ということは大人の読み物としてクオリティが高い、ということだ。

と、ここまでが
小説前半までの評価だ。

しかし、残念ながら
後半『死体』が小説世界に現われてからというもの、
世界が小さくなる。
もっとメンタルな部分での罪や罰を扱った小説だと思って読んでいたら、突然『誰が誰それを殺したか?』という謎の追求にスリ変えられたかんじだった。

幕引きの仕方を考えて、こうなったのだろうな、という気がするのだが、
「錦織」という美少女の後半での変貌ぶりなど、
読み手としてはガッカリだった。
あれでは芸がなさ過ぎる。

謎が解かれて、なお魅力が増す、というふうに書けなかったのだろうか。
前半の素晴らしい筆力を目の当たりにされているだけになおそう思う。
もう少し執筆に時間をかければ良かったのかも、という気もする。

しかし私はこの小説によって小説の面白さを再発見して、
現在は桐野夏生の『グロテスク』を読んでいる。
『心では重すぎる』の前半は素晴らしかった、後半部分を読んでそれが読み手の希望にそぐわなかろうがなんだろうが、
その魅力はいささかも減じない。

小説も映画も
魅力のある部分は強烈に輝く

私は映画のそういうところが好きだし、小説もまた、書き手の優れた才能が最も現れる部分と、そうでない部分があり、
優れた部分の魅力は、そうでない部分によって足を引っ張られるわけでもないことに気づかされた。
その意味で私はこの『心では重すぎる』に感謝したい。







posted by となーす at 06:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月17日

となーす書評「ポップ1280」

そこそこ映画ファンを自認する人で、
ジムトンプソンの名前を知らぬ者はおるまい。

『現金に体を張れ』の秀逸な脚本を書いた人だし、名画『ゲッタウェイ』の原作者。

このブログでも以前、この人の「失なわれた男」という小説をとりあげたことがあるが、
「ポップ」は彼の最高傑作との誉れ高い作品である。

ポップ1280 (扶桑社ミステリー)


出だしの1ページ目で、
この、ぽっちゃりした風体の主人公にやられるに違いない。

ぜんぜん仕事の出来そうにない保安官であるこの男。しかし自らの保身や生存本能についてだけはずば抜けていて、「人ロ1280人」の町でしたたかに生きている。

よく大企業とかにいる、何故、こんなに仕事が出来そうにないのに、上の方の役職についてて、肌つやが良くて生活に不自由してないの?っていうぽっちゃり体型の人。

それがこの小説の主人公であり、語りべなのである。

こんな男だから、読者に対して誠実であるはずもなく、一人称の語り口は「描写」や「告白」というより「言いわけ」に近い。

しかし、読み進めていくうち、
この男の内には、ある種の冷めた心、があるのに気づく。
人間に対する期待とかロマンチシズムとか、そういう類の視点がない。
こういう男だからこそしかし、『ボップ1280』で起こっていることを正確に読者に伝えることが出来るのである。

この物語作法、肌合いで一番似ているのは松本人志かもしれない。

などと思いながら読み進めていくと、
小説の終わりの方で、
主人公は『神の視点』を経験する。

なぜ自分はこんな男に生まれたのか?世界はどうしてこんな形をしているのか、
少しだけ、一瞬だけ、理解するのだ。

このクライマックスは是非、実際に読んで触れてみてほしいのだが、

私が結局、思い出したのは、あの「しんぼる」のラストだった。
何故あのようなラストになったのかわかった気がしたのだ。

おそらく、この小説と同じような体験を再現しようと試みたに違いない。
ただ、表現方法の引き出しが少ないために、あのような新興宗教の勧誘ビデオみたいな安い感じになってしまっているだけで、
彼には、世界の成り立ちが一瞬見え、それを表現しようとしていたのだ。

ま、そんな感じで、
トンプソンの最高傑作は、うわさに違わぬモノホンの小説でした。










ラベル:ポップ1280
posted by となーす at 20:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月29日

となーす書評「告白」

今回はひさびさに小説を取り上げます。

告白


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posted by となーす at 02:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月13日

となーす書評「乳と卵」


山田詠美評の通り、
容れ物としての女、という感じ方、考え方、

大阪弁を採用することでよく伝わってくる、良い作品、と思うのだが、
そういえば、というか、
読後に
この、人間のことを『容れ物』に見立てる、というのは、北野武的だな、と思っ
た。
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ラベル:乳と卵
posted by となーす at 04:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月28日

となーす書評「失われた男」

最近、良い作品に出会えてない。
この、ジムトンプスンの小説も結構、中盤辺りまでは、興奮して読んだのだが、
残念なことに最終的には安きに流れた、感じの結びで、読後感は今イチだった。

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posted by となーす at 05:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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